藤田徳人

子供を教育するときに、親は「偉いね」「すごいね」と言ってほめて <やる気> を出させて成績を上げさせようとするものです。実際子供のやることなど、偉くもすごくもないのです。ですが、そうやって子供を騙すことによって意欲を芽生えさせながら教育します。 受験もそうです。神社にお参りして、おみくじで大吉を引いて「試験は必ず合格する」なんて書いてあれば、それだけで合格した気分になり、次の日から勉強意欲がわくというもの。もし、そういう暗示も何もなく、「そんな簡単に合格するわけがない」という現実ばかりを突きつけられていたのでは、実際勉強する気力を生み出すことは難しいでしょう。 映画やドラマの世界もそうです。役者さんたちは、あくまで芝居をしているわけであって、嘘の笑い、嘘の涙を作って物語をすすめています。「これは芝居だ」とわかっていても、人はそれを見て自分が主人公になった気分になり、普段得られない喜怒哀楽の感情やドキドキ感を得ようとします。そういったものを見ている人はむしろ、無意識的に「騙されよう」としています。そして騙されれば騙されるほど、その感動は深くリアルなものとして自分自身にフィードバックされるわけです。 多くの男性はアダルトビデオを見て興奮しますが、これだって「自分はこの女優とエッチしている」という妄想を刺激しているだけにすぎません。ですが、男性たちは必死になってそのバーチャルな世界にわざと入りこもうとし、そして強い性的興奮を得ようとするのです。これらは全て、自ら騙されようとしているから成り立つもので、人はいかに騙されたがっているかということがわかります。騙されるほどに快感を得ることができるからです。